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資金繰りの不安で経営判断がブレる本当の理由|恐怖を「構造」で扱う

現金が細ると、なぜか判断が一律「とにかく節約」になる。経営者を縛る一番のリミッターは口座の数字ではなく「お金が無いかもしれない」という恐怖そのものです。事実と"かもしれない"を切り分け、恐怖を構造で扱う方法を実体験から解説します。

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渡邊悠介


資金繰りの不安で経営判断がブレる本当の理由|恐怖を「構造」で扱う

TL;DR

  • 経営者を縛る一番のリミッターは、口座の数字ではなく「お金が無いかもしれない」という恐怖そのものです。
  • 恐怖に飲まれると、切るべきコストと残すべきコストの区別がつかなくなり、判断が一律「とにかく節約」になります。
  • 恐怖は性格ではなく構造で扱えます。信用枠は平時に準備し、コストは「売上に直結するか」の一軸で判断する。先に基準を決めておけば、感情が揺れても判断は揺れません。

現金が細った時期に、なぜか言葉が研ぎ澄まされた

会社の現金が一番細っていた時期のことを、よく思い出します。

普通に考えれば、お金の不安が大きいほど判断は鈍るはずです。ところが実際は逆でした。その時期ほど、商談で口から出てくる言葉に、無駄がなくなっていったのです。

理由はシンプルで、「あったら嬉しい」を提案に盛る余裕がなかったから。だから一つひとつ、「これは本当に相手の売上に効くのか」を自問してから話していました。制約が、本質を選ばせてくれていた。

同時に、もう一つのことにも気づきました。怖かったのは、実は口座の残高そのものではなかった、ということです。残高は、見れば事実が分かります。怖くて見るのを後回しにしていたのは、数字ではなく「お金が無くなるかもしれない」という予測のほうでした。

つまり、経営者を縛る一番大きなリミッターは、口座の数字ではなく、「お金が無いかもしれない」という恐怖のほうにある。これが、あの時期に身をもって受け取った発見でした。

なぜ恐怖は経営判断を一律「節約」に変えるのか

恐怖が判断をゆがめる仕組みは、構造で説明できます。

恐怖に飲まれると、人は「切るべきコスト」と「売上に直結するから残すべきコスト」の区別がつかなくなります。全部が一律で「とにかく節約」になる。本来なら、売上を生んでいる広告や、価値の源泉である人への投資は残すべきなのに、恐怖モードに入ると、それらまで一緒くたに削ってしまう。結果、現金は守れても、回復のためのエンジンまで止めてしまうのです。

同じ資金繰りの谷にいても、そこで縮む経営者と、攻めに転じる経営者がいます。その差は、お金の量でも性格でもありませんでした。「不安が消えた後の自分」を、どれだけ鮮明に描けているか。それだけで、同じ恐怖が、縮むリミッターにも、攻めのアクセルにもなる。燃料は同じで、向きが違うだけです。

向かい風の中で自転車をこぐのに似ています。止まって耐えていると、風に押されて体力だけが削られる。でもペダルを踏み出すと、同じ風でも倒れなくなる。怖いから止まると恐怖が膨らみ、越えた先を見て一歩こぎ出すと、同じ恐怖が前に進む力に変わる。

この「縮む側」と「扱う側」の違いを、整理するとこうなります。

恐怖に飲まれる経営者恐怖を構造で扱う経営者
見ているもの「無くなるかもしれない」という予測残高という事実と、その先の打ち手
コスト判断一律で「とにかく節約」「売上に直結するか」の一軸で取捨
信用枠困ってから慌てて動く余裕がある平時に準備しておく
谷での動き縮こまって体力を削る越えた先を見て一歩こぎ出す

恐怖を「構造」で扱う二つの基準

では、どうすれば恐怖をアクセルの向きに変えられるのか。気合いではなく、判断基準を先に決めておくことです。

一つ目は、信用枠(融資や与信)を、資金に余裕がある時に準備しておくこと。お金は、必要に迫られてからでは借りにくく、困っていない時ほど借りやすい、という非対称があります。だから「まだ要らない」時にこそ枠を作っておく。これは、恐怖が判断をゆがめる前に、選択肢を確保しておく行為です。経営者が無意識に天井を引いてしまう構造については、AIを入れても営業の数字が動かない理由|ツールより先に外す「経営者の天井」でも別の角度から触れています。

二つ目は、コストを「売上に直結するか」の一軸で判断すること。残すか切るかを、感情ではなくこの一軸で機械的に決める。先に基準を決めておけば、現金が細った局面でも、感情だけが揺れて判断は揺れない状態を作れます。

そしてこの二つの土台になるのが、自分が今「事実にビビっているのか、“かもしれない”にビビっているのか」を切り分ける習慣です。これは資金繰りだけでなく、採用や新規投資といった「怖いから動けない」あらゆる場面で効いてきます。経営者がつい「順調です」と強がってしまい、打ち手が遅れる構造は経営者が「順調です」と言ってしまう構造|自己開示が打ち手を呼ぶで、評価ではなく自分の物差しで意思決定する考え方は「いい人」をやめる — 評価される側から、価値を証明する側へで深掘りしています。

よくある問い:節約と投資の線引きが、恐怖の中ではできません

恐怖の真っ只中で線引きしようとするから難しいのです。線引きは、恐怖が来る前の平時にやっておく。「このコストは売上に直結するから何があっても残す」「これは無くても売上が落ちないから真っ先に切る」と、平時にラベルを貼っておく。そうすれば、谷に落ちた時は、ラベルに従って動くだけになります。判断を恐怖の外側に出しておく、という発想です。

あなたを縛っているのは、数字ですか、それとも”かもしれない”ですか

お金の恐怖は、消そうとすると逆に大きくなります。消すのではなく、向きを決める。事実と予測を切り分け、判断基準を平時に作っておく。それだけで、同じ恐怖が縮むリミッターから攻めのアクセルに変わります。

最後に、一つだけ問いを置いておきます。あなたが今、資金繰りで感じている重さは、口座にある「事実」から来ているでしょうか。それとも、まだ起きていない「かもしれない」から来ているでしょうか。その切り分けが、次の一手の解像度を変えます。


リミッターを外し、理想を叶えるビジネスコーチ・渡邊悠介の発信より。

よくある質問

Q資金繰りの不安が大きいと、判断が鈍るのは仕方ないことですか?
不安そのものは自然な反応ですが、判断が鈍る一番の原因は不安の中身を切り分けていないことにあります。「お金が無い」という事実にビビっているのか、「無くなるかもしれない」という予測にビビっているのか。この二つを分けるだけで、打てる手の数がまったく変わります。事実なら具体的な対処に動け、"かもしれない"なら情報を取りにいけばよく、どちらも漠然と縮こまるよりは前に進めます。
Q「恐怖を構造で扱う」とは、具体的に何をすればよいのですか?
感情が揺れても判断が揺れないように、判断基準を先に決めておくことです。代表的なのは二つ。信用枠(融資や与信)は資金に余裕がある時に準備しておくこと、そしてコストは「売上に直結するか」の一軸で残すか切るかを決めること。この二つを平時に決めておくと、現金が細った局面でも一律の節約モードに陥らず、残すべき投資を残せます。
Qお金の制約は、経営にとってマイナスでしかないのではないですか?
制約そのものは悪ではありません。むしろ、現金が細っていた時期のほうが商談の言葉から無駄が消え、「本当に相手の売上に効くか」だけを問えた、という経験があります。締切が近いほど一番大事な一文だけが残るのと同じです。悪いのは制約ではなく、制約への恐怖に飲まれて本質を選べなくなること。制約は使い方次第で、本質を選ばせてくれる装置になります。
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渡邊悠介

渡邊悠介

代表取締役 / 株式会社Hibito

リクルート、MagicMomentを経て現職。幅広い営業経験と、営業推進、新規事業開発、採用の観点から企業の急成長を営業支援で支える。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。

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