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ゴールと戦略の自己決定|メンバーが自ら動く目標設定の設計

自己決定理論(SDT)に基づく目標設定のアプローチを解説。マネージャーが目標を「与える」のではなく、メンバーが自ら決める仕組みを作ることで、内発的モチベーションと自律的な行動を引き出す実践を紹介します。

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渡邊悠介


TL;DR

  • 外から与えた目標は『やらされ感』を生み、自ら決めた目標は困難な局面での粘りに決定的差を生む
  • 自己決定理論の3欲求(自律性・有能感・関係性)を満たす『制約付き自律』が機能する
  • 会社が方向性を示し、メンバーが目標と戦略を自ら考える1on1の5ステップで設計する

この記事が役立つ状況

  • 対象者: 営業マネージャー・チームリーダー(メンバーの目標設定と動機づけに責任を持つ立場)
  • 直面している課題: 目標を与えても『やらされ感』で動かない/ボトムアップでは会社の期待と乖離する
  • 前提条件: 1on1の場が定期的に確保されている/会社のビジョン・KGI・市場環境などメンバーに共有できる文脈情報を持っている

このノウハウをAIで実行するプロンプト

以下をコピーしてLLMに貼り付け、[ ] 内を自社の情報に書き換えてください。

あなたは営業マネジメントのコーチです。自己決定理論(自律性・有能感・関係性)と『制約付き自律』の考え方に基づき、私のチームの目標設定プロセスを設計してください。

【会社の方向性】[今期の重点戦略・KGI]
【チームの期待】[チームへのKGI・市場環境]
【対象メンバー】[役割・経験年数・現状の課題]
【現状の目標設定方法】[トップダウン/ボトムアップ/その他]

以下を出力してください:
1. ステップ1〜5の1on1プロセスで、このメンバーに投げかける具体的な問い
2. 『制約付き自律』として会社が決める枠とメンバーが決める範囲の線引き
3. 自己決定感を週次で維持する問いかけ例

なぜ「与えられた目標」は機能しないのか

結論から言えば、外から与えられた目標は「やらされ感」を生み、自ら設定した目標は「やりたい感」を生む。この違いがパフォーマンスに決定的な差をもたらする。

同じ数字の目標でも、「自分でそこに決めた」と感じているメンバーと「上から落とされた」と感じているメンバーでは、困難な局面での粘りが根本的に異なる。OKR(目標と主要な成果指標)の設計とこの自己決定のアプローチを組み合わせると、チームの方向性と自律性を両立させることができる。

心理学者のエドワード・デシ(Edward Deci)とリチャード・ライアン(Richard Ryan)が提唱した自己決定理論(Self-Determination Theory)は、人間の動機づけを「外的調整(やらされる)」から「内的調整(自ら選ぶ)」までの連続体として捉える。目標設定においてこの理論を活用することが、内発的動機の起点になる。

自己決定理論の3つの基本的心理欲求

自己決定理論では、内発的モチベーションを高めるために3つの心理欲求が満たされる必要があると述べている:

1. 自律性(Autonomy)

「自分の意思で選択・行動している」という感覚。

営業チームでの実践:

  • 目標の達成方法を自分で決められる
  • 優先する顧客・アプローチを自分で選べる
  • 自分の強みを活かした動き方ができる

2. 有能感(Competence)

「自分はこれができる・成長している」という感覚。

営業チームでの実践:

  • 適度なストレッチ(難しすぎず・易しすぎず)
  • 進捗・成長の可視化
  • スキルアップの機会と実感

3. 関係性(Relatedness)

「チームの一員として受け入れられている」という感覚。

営業チームでの実践:

  • 1on1での本質的な対話
  • チームへの貢献感
  • マネージャーへの信頼・心理的安全性

「制約付き自律」——会社の期待とメンバーの自律を両立する

純粋なボトムアップ(メンバーが完全に自由に目標を決める)は、会社の目標と乖離するリスクがある。かといってトップダウンでは「やらされ感」が生まれる。

最も機能するのは「制約付き自律」:会社の方向性・チームの期待という枠組みの中で、具体的な目標・戦略をメンバーが自ら考えるアプローチだ。

【会社が決める】
- 会社のビジョン・年次目標
- チームへの期待KGI
- 重点戦略の方向性

【メンバーが決める(マネージャーとの対話を通じて)】
- 個人の四半期目標(KGIの達成にどう貢献するか)
- 目標達成のための戦略・アプローチ
- 自分が最も力を発揮できる役割・領域

自己決定を促す目標設定の1on1プロセス

ステップ1:情報と文脈を共有する(マネージャー主導)

メンバーが自ら判断できるための情報を提供する:

  • 「今期、会社は○○を重点的に追っている。なぜかというと△△だ」
  • 「チームのKGIは○○。先期の実績は△△で、今期の市場環境は□□」
  • 「他のメンバーは何を重点に取り組む予定か」

情報なしに「自分で考えろ」は自律性を支援していない。

ステップ2:メンバーの解釈を引き出す(問いの提供)

共有した情報をメンバーがどう受け取り、どう意味付けしているかを探る:

  • 「この方向性を聞いて、どう思いるか?」
  • 「自分のチームへの貢献として、何を重点にしたいと思いるか?」
  • 「今期、特に力を入れたい領域はどこだか?その理由は?」

答えを急がず、メンバーが考える時間を与える。

ステップ3:目標案を自分で考えてもらう

「あなたが今期達成したい目標を自分で考えてみてください」という問いを出し、次の1on1までに考えてきてもらいる。

この「考える時間」が自己決定感を生む重要なプロセスだ。

ステップ4:対話で目標を洗練させる

メンバーが持ってきた目標案に対して、マネージャーは以下の問いを使って洗練させる:

  • 「なぜその数字に設定したのだか?根拠は何だか?」
  • 「これを達成するためにどんな戦略を考えているか?」
  • 「会社・チームの期待との整合はどう見ているか?」
  • 「何がうまくいったら、この目標に近づくと思いるか?」

チームの期待との大きなギャップがある場合は、「チームとしての期待はこうだが、あなたはどう思うか」と対話する。押し付けではなく、双方の視点を持ち寄った合意形成を目指する。

ステップ5:戦略も自ら決める

目標の数字だけでなく、**どう達成するか(戦略)**もメンバー自身が考えることで、自己決定感が深まる:

  • 「この目標を達成するために、あなたはどんなアプローチをとるか?」
  • 「重点を置く顧客セグメントや商材はどれだか?」
  • 「何を強化し、何を手放するか?」

自己決定感を日常的に維持する

目標設定時だけでなく、日常的にメンバーの自己決定感を維持することが重要だ:

週次MTGでの自律性支援

  • 「今週どこに力を入れるか?」(確認ではなく、選択を促す問い)
  • 「詰まっていることがあれば、どうしようと思っているか?」(答えを提供しない)

1on1での有能感の強化

  • 成長・変化を具体的に指摘する
  • できるようになったことを言語化して共有する

関係性の維持

  • メンバーの個人的な変化・状態に関心を持つ
  • チームへの貢献を可視化・承認する

変革のステップ——自己決定文化を作る

チームに自己決定の文化を根付かせるには、段階的な変革が必要だ:

Phase 1(1〜3ヶ月):目標設定を対話型にする

  • 従来:マネージャーが数字を告知
  • 変更後:目標案をメンバーが考え、対話で合意する

Phase 2(3〜6ヶ月):戦略の決定権をメンバーに移す

  • 週次の重点アクション・アプローチ方法はメンバー自身が決める

Phase 3(6ヶ月〜):問題解決の主体をメンバーに移す

  • 詰まったときの「どうすればいいだか?」ではなく「どうしようと思っているか?」という問いが起点になる

この変革には時間がかかるが、組織の成功循環モデルの「思考の質→行動の質」の変化が、徐々に成果に現れる。

まとめ:自己決定を設計することがマネジメントの本質

「指示してやらせる」から「問いを立てて考えさせる」へ——この転換が、マネジメントの質を根本から変える。目標設定コーチングのスキルを身につけることで、この転換をより確実に実現できる。

目標の数字は変わらなくても、その目標をどう意味付けし、どんな戦略でどう達成するかをメンバー自身が決めるプロセスを設計することで、同じ目標に対する取り組み方が全く変わる。

まず次の目標設定面談で、数字を伝える前に「あなたはどう考えるか?」という問いから始めてみましょう。SMART目標設計のフレームワークを活用することで、自己決定のプロセスで設定した目標を具体的・計測可能な形に精度高く落とし込める。

参考文献

  • Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. Plenum Press.
  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist, 55(1), 68-78.

よくある質問

Q会社から数字が降ってくる状況でも自己決定は可能ですか?
可能です。『何の数字を追うか』は決まっていても、『どう達成するか(戦略)』と『自分はそれに対してどんな意味を見出すか(意味付け)』はメンバー自身が決められます。この2つの自己決定感を作ることが、外から与えられた目標を自分ごと化する鍵です。
Qメンバーが自分で目標を設定すると、ぬるい目標になりませんか?
適切な情報提供と対話があれば、そうなりません。会社の期待・市場の状況・過去実績を共有した上で、『あなたはどう思うか』と問うことで、現実的かつ意欲的な目標が生まれます。また、ぬるい目標を出したメンバーへの『なぜそこに設定したのか』という問いが、より深い対話につながります。
Q自己決定を促す1on1の進め方を教えてください。
まず情報提供(会社の方向性・チームKGI・市場状況)→自分ごと化の対話(あなたはこれをどう捉えるか)→目標案の共有(あなたはどんな目標を設定したいか)→フィードバックと合意(一緒に洗練させる)というステップで進めます。
マネジメント実践 自己決定理論 目標設定 内発的動機 自律性 マネジメント
渡邊悠介

渡邊悠介

代表取締役 / 株式会社Hibito

リクルート、MagicMomentを経て現職。幅広い営業経験と、営業推進、新規事業開発、採用の観点から企業の急成長を営業支援で支える。営業組織コーチング・個人コーチングを通じて、営業パーソンの主体性と成果を最大化する。「全ての人が自分の未来を自分の手で描ける社会」の実現をミッションに掲げる。

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